環境調節工学とは,ビニルハウス,温室,植物工場などの施設内で積極的に環境調節を行って植物に好適な生育環境を作り,その施設内で生産目的に応じた効率的な生育制御技術を開発する研究領域です。
本研究室では,環境工学的および生態生理学的な手法を用いて植物の環境応答や制御環境下の植物生育の解明を行い,その知見を植物の効率的生産に生かすための研究を行っています。
植物生産の目的
植物は食料,薬,観葉,環境保護,医薬原材料,工業素材,エネルギ原料などの役割があり,生産目的によって植物種や栽培法が異なります(サツマイモのように複数の役割を持つ場合もあります)。
環境要因
植物を取りまく環境には物理環境,化学環境,生物環境があり,本研究室はおもに物理環境と化学環境を対象にしています。具体的には,地上部のガス(二酸化炭素濃度,酸素濃度),光(光強度,光質,明期),温湿度,風,地下部の溶存酸素,養分組成などに焦点をあてています。
植物材料
生産目的によって異なります。野菜(葉菜,果菜,ハーブ野菜),イモ類(サツマイモなど),マメ類(ダイズなど),穀類(イネなど),薬草(漢方薬草,西洋薬草),花卉(ランなど)など多種多様です。発芽から栄養生長,生殖生長,収穫に至る全ての生育ステージを対象としている点も特徴です。
植物生産の場
生産の場は,組織培養植物では培養容器(光混合培養期と光独立培養期)と順化システム,実生では発芽から移植期までの育苗システム,移植期から収穫までの園芸施設(温室,ビニルハウス)と植物工場(太陽光型,人工光型)に大別できます。
最近は,高度環境制御システムが導入された大規模温室における環境制御技術の開発,作物生育モニタリング、植物モデリング、苗生産に特化した閉鎖型苗生産システムの開発と栽培技術の確立,光環境調節による機能性野菜の生産,環境ストレス付加条件下の植物環境応答の網羅的解析、植物工場を用いた薬用植物の薬効成分の高効率生産,閉鎖型植物工場を用いて遺伝子組換え植物により医薬用原材料物質を生産するための技術開発,などを精力的に行っています。